1992年7月に画期的なコンピ物CDがシリーズ発売され、ガレージパンク・マニア者達は興奮のルツボとなったのであった。
「カルトGSコレクション」と銘打った、各レコード会社から「日本のGS=ガレージサウンド」に焦点を当てたコンピ物だ。
それまでもGSのコンピ物はリリースされていたが、それは「懐かしのGSサウンド」といった趣向で、どちらかというと大物GSバンドに焦点をあてたモノだった。
対してカルトGSコレクションは、それまでほとんど陽の当たらないGSバンドが数多く収録されていたのだ。1枚しかシングルを出していないバンドや謎のバンドまで幅広く収録されていた。余程のマニア以外は高い金を出してレコードを買う必要がなくなったのだ。そして、このシリーズが今でも高い評価を得ているのは何も珍盤がたくさん収録されているからだけでなく選曲がアメリカのナゲッツなどと同等に近い感覚にある。つまり、ガレージパンク的な演奏をするバンドに光を当てていたのだ。
そして、カルトGSコレクションに追随するようなカタチで各レコード会社からリリースされたのが、1995年に発売された「キューティー・ポップ・コレクション」である。
カルトGSコレクションの女性版といった感じでもある、キューティー・ポップ・コレクションは、60年代~70年代の日本のガールズ・ポップ・シンガー達のエレキバンドをバックに歌ったもの、つまりガールズ・ガレージパンクといった趣向であった。
そんな「ガールズ・イン・ガレージ」の中でも1・2を争う人気を誇るのが、「マーガレット」と「小畑ミキ」。
今回は「マーガレット」について。
上の写真はミュージックライフ1968年2月号にて掲載された、恐らく日本で始めてのマーガレットの紹介文だと思われる。
(写真だと文字がわかりづらいと思いますので、下に詳細を載せておきます。)
お稽古事なら何でもマスターしたと言う彼女が芸能界に入ったきっかけというのが大変面白い。彼女はファッション・モデルをしていたが、たまたま近所同士にあたる寺内タケシの所へ遊びに行ったところを認められたというのである。それから本格的に歌とギターを習いはじめ、この1月にデビューした。
本名:マーガレット・リー・バレット
国籍:アメリカ(父はアメリカ人、母は日本人)日本語はヘタ
生年月日:1951年2月8日 16才
サイズ:162cm 45kg
学校:Kinnik High School
趣味:ピアノ、ギター、料理、ダンス
デビュー曲:A面「遊びに来てね」 B面「バラ色の妖精」
と、まぁ、こんな感じである。
「本格的に歌とギターを習いはじめ・・・」と、書いてあるが本当かぁ?
デビュー・シングルの「遊びに来てね」のジャケットは一番上の写真でとってもオシャレだ。ちなみに中ジャケットは下の様な感じである。
なんだか顔だけ合成したようになってるが、気のせいだろう。
あと、ここのプロフィールだと身長が164cmとなっている。まぁ、この手の業界ではサバイブは必須なのでしょうがない。
ついでにマーガレットのデビューシングル告知広告が下の写真。
「青い瞳のマシュマロ!!」というキャッチ・フレーズもなんだかいいですね。
そして、日本のガレージ・ロリータ・パンク最強(凶)の曲が、1968年5月に発売された2枚目のシングル「逢えば好き好き/幸福(しあわせ)」である。(下の写真)
逢えば好き好きのロゴがメチャクチャかっこいい!
そしてなぜかマタニティ・ドレスみたいなのを着ている。
バニーズのガレージパンク度が高すぎる過激な演奏に輪をかけたような、(ある意味)過激なマーガレットの歌声が融合して唯一無二の、キラーチューンになっている。
スウェーデンのガレージパンク・バンド「The Hives」のような荒っぽく、リズムも走る演奏に、何も考えていなさそうで能天気なマーガレット嬢の舌足らずなロリータ声が寺内タケシ氏のギターと互角に渡り合ってます。
余談になるが寺内タケシ&バニーズの演奏能力は、当時のGSとくらべてもズバ抜けて高く、何よりクソやかましい。
「バニーズ・ゴールデン・コンサート」という実況録音盤がリリースされているのだが、これが本当に凶暴な演奏で凄まじい!
外国のガレージパンク・マニアの間でも人気があるのがわかる。
ちなみにギター&ボーカルの黒沢博氏は黒沢年男の実弟で、後のヒロシ&キーボーである。
さてさて当時、マーガレットは人気があったのだろうか。
当時GSが大好きだった、Sさんという音楽の大先輩にマーガレットの曲を聴かせたところ、「バニーズは大好きだったし、こんな娘がいたのもなんとなく憶えてるが、ほとんど話題にならなかったんじゃない?」と言っていた。
「記憶違いかも知れないがTVで歌ってるのを観たかもしれない」と言っていた。
もしこの話が本当ならVTRが残ってる可能性があるが、当時の映像はまず無いだろうなぁ。
2枚(4曲)しかシングルを出していないマーガレットだが、「逢えば好き好き」はいろんなコンピ物で聴ける。
ガレージ度が高い曲は「逢えば好き好き」のみで他の3曲は哀愁たっぷりのマイナー調のメロディなのだが、ここでもマーガレット嬢は楽しげに歌ってますのでこちらも必聴です。
「キューティー・ポップ・コレクション・キング編 SUKI SUKI EDIT」には3曲収録されているが、なぜかデビュー曲の「遊びに来てね」は収録されていない。
「遊びに来てね」はどういうわけか、「カルトGSコレクション・キング編」に収録されている。まぁ、とりあえずはマーガレットが残した4曲は全て聴けるのであります。
これで芸能界から消えたと思いきや、実は1970年に「エミー・マーガレット」と改名して東芝から再デビューする。そのシングルが「あなたって凄いのね/夢をちょうだい」である。(下の写真)
「いやいや、あなたの独特な歌唱の方が凄いですよ」と言いたいところなのだが、あの下足らずなロリータ声はいずこへ。。。
ここで聴けるマーガレットの歌声は完全にやさぐれてて演歌の歌いまわしで、唸りまくり歌唱へと進化してます。(めくらって歌詞が出てくるし・・・)
2年間の間にいったい何があったのやら。。。
ってか、これ本当に同一人物か!?
ちなみにこの音源は「歌謡曲番外地東宝レコード女優編モア~あなたって凄いのね」にて聴けます。
そして更にその2年後の1972年、東宝映画の「薔薇の標的」にて、「シュバルツ婦人の娘役」という設定で出演している。私は観たことないのだが、チョイ役なのかもしれないなぁ。
更に更にその2年後、、、
と言いたいところだがその後の行方は全くわかりません。ネットで調べても全く情報がなく、私が今回だらだらと長く書いた既出の情報くらいしか無い!
現在この文章を書いている2011年、もしもマーガレットさんがご存命なら(失礼!)還暦かぁ。
幸福(しあわせ)な人生を過ごしていることを願ってやみません。
マーガレットの「逢えば好き好き」が聴けるアルバム
「キューティー・ポップ・コレクション」は現在入手が困難となってます。
が、この曲は他のコンピ物で聴けます。
60’s ビート・ガールズ・コレクション : GSエイジのマドンナたち
このアルバムは他にもキューティー・ポップ二大巨頭の小畑ミキさんの全シングルが聴けるのでオススメ!
ニッポン・ガールズ~和製ポップス、ビート歌謡&ボサノバ
Jガールズ「黄色の世界」も聴けるのでオススメ!
歌謡曲番外地 東宝レコード女優編モア~あなたって凄いのね
エミー・マーガレットに改名後のシングル「あなたって凄いのね」収録。