ニュー・ロック期のモップス・ヒストリー

故・鈴木ヒロミツ氏や星勝氏が在籍していたモップスの71年5月に発売された3枚目のアルバム「御意見無用(いいじゃないか)」である。
このアルバムにニュー・ロック期の魅力がぎっしりと詰まっている。


御意見無用+1

モップスはグループサウンド時代のサイケデリック期が海外などでも評価が高いようだが、ニューロック期のモップスもとても魅力的だ。
サイケ期のモップスについても併せてお読み下さい。)
演奏能力は同時期の日本のロックバンドと比べて少しだけ劣るかもしれないが、圧倒的な音圧と暴力的ともいえる爆音サウンドは本当に素晴らしい。
このアルバムに収録されている曲の大半はハードな曲で、やかましい音が好きな人にはオススメ。

ここまで読むとやかましいだけのバンドかと思われるかもしれないが、爆音サウンドは魅力のひとつであって、それ以上にモップスのアレンジ能力が素晴らしい。
凶暴な演奏をしつつ、繊細なアレンジや緻密な曲展開が繰り広げられているので、このアルバムは何回聴いても飽きがこない。
このアルバムが発売された71年の他の日本のロックバンドのアルバムと比べてもアレンジがきめ細かいのだ。

この時代、日本のニューロック・バンドは英語派と日本語派で分かれていたようで、モップスもこの頃は英語派だったが、他のバンドのサウンドは良くも悪くも海外のバンドのコピーを抜け切れていない気がする。
モップスは英語で歌っていても、「日本のロック!」って感じがする。
この辺は言葉で説明するのが難しいし私の個人的感覚なのでそこはご了承を。

やはりアレンジだろう。
特に1曲目の「御意見無用(いいじゃないか)」はモロに出ている。
阿波踊りをリズムを採用しているのだが、全く違和感を感じない。(ちなみに私も自分のバンドでこの曲のコピーをしたことがあります)
この流れはゆらゆら帝国の「夜行性の生き物3匹」辺りに受け継がれているような気がする。

モップス解散後、星勝氏はアレンジャーとなり、井上陽水、RCサクセション、安全地帯などを手がけることに。
全く譜面を読めなかった星勝氏は独学で編曲を勉強したというから努力+センスの人だと思う。

フォーク期のRCサクセションはホリプロ時代にモップスと同じ事務所ということもあり、よくツアーをモップス、井上陽水と回っていて、そのころからモップスのやかましいサウンドを気にいっていたようで、メンバーからも可愛がられていたらしい。そんな縁からか、故・忌野清志朗氏は、モップスの6枚目のアルバム「モップスと16人目の仲間(72年発売)」に「マイ・ホーム」という無茶苦茶かっこいい曲を提供している。

RCサクセションが76年に発表した3枚目のアルバムで超名盤の「シングルマン」は星勝氏が全面的にサウンドプロデュースした作品で有名。
だが実際は清志朗氏と星氏は現場でよく衝突したらしい。
清志朗はモップスのやかましいサウンドが好きで、荒々しくてラフな録音を期待していたのだが、星氏はニューミュージック系のサウンドにしたかったようだ。(これは売ろうと思えばしょうがないと思う。)
後に清志朗は自伝にて、

「星さんは頑張ってくれたけど、もっと荒っぽい感じでやりたかった。音が整理されててブ厚いっていうか豪華な感じになっていた。聴きやすいかもしれないけどオレ好みじゃなかった。まぁオレたちの力量不足ってこともあったけど」

と語っている。

後追いで聴いた私個人的には、確かにひとつひとつの音がくっきりと聴こえて聴きやすいけど、もっとロックっぽくてもいいのでは?と思った。
その反面、ドラムの音や曲の間とかにある空気間は、今では再現できない素晴らしいものではあるとも思う。

大分、モップスとはかけ離れた文章になってしまったが、モップス後期はおとなしい音になってしまって、やかましいモップスが好きな私にとってはちょっと聞いてて厳しいものがある。
私の大好きな日本の映画に「野良猫ロック」というシリーズモノの映画がある。

この映画の第一弾「女番長・野良猫ロック」は主演が和田アキコなのだが、そのワンシーンでモップスをバックに「ボーイ・アンド・ガール」を歌うのだが、これはシングル盤よりもロック度が高く全然カッコいいのである。アレンジが素晴らしいのだ。

一般の人にも受けいれられるようなアレンジを施すと楽曲的には高いものになると思うが、私個人的には魅力を感じない。
アレンジの方向性や施し方、さじ加減って本当に重要だ。

GS期~ニューロック期を駆け抜けたモップスには沢山の曲やバージョン違いの曲があり、今はそれらを全て聴くことが出来るのだが、私的にはこれだけじゃ足りねぇ。
1972年8月に「モップス450分コンサート」というイベントが行われたのだが、これの音源が全てでは無いが残されている!

これをなんとかCD化してくれないかなぁ。。。

 

ニューロック期のモップス ディスコグラフィ


ロックン・ロール’70+2

1970年5月発売。東芝レコード移籍後初のアルバム。
カバー曲が占める割合が多いがオリジナルの「パーティシペイション」は絶品!

 


ロックン・ロール・ジャム’70

1971年発売。
70年1月、東京ヤングメイツで行われたモップス、内田裕也とフラワーズ、ザ・ハプニングス・フォー、ゴールデン・カップスによるライブ・オムニバス。
日本のロックの夜明けが記録されている。モップスは5曲収録されている。

 


御意見無用+1

1971年発売。
本ページにて紹介したアルバム。故・ヒロミツ氏の圧倒的なボーカルと星勝氏のアレンジが冴え渡る。リズム隊も凶暴。個人的にはモップスの最高傑作。

 


雷舞+6

1971年発売。モップスのライブアルバム。
ビートルズのカバー「抱きしめたい」がとにかく凄いの一言。
ボーナストラックで「ロックンロールジャム’70」収録の5曲全てが聴ける。

 


雨 モップス’72+2

1972年発売。「御意見無用」の日本語版が収録されている。
ヘヴィな曲が少なく、ヒロミツ氏が歌う曲も少ない。
どうにも寄せ集めみたいなアルバムに感じてしまう。

 


モップスと16人の仲間+2

1972年発売。世間ではモップスの最高傑作と評判がよい。
モップスにゆかりのあるミュージシャン(忌野清志郎、泉谷しげる、井上陽水、吉田拓郎など凄いメンツが)が曲を提供。
忌野清志郎の「マイホーム」はギターリフがかっこいい。

 


Exit

1973年発売。モップスのラストコンサートを収録。
演奏の出来はあまりよくない。M2「モップスヒストリー」ではモップスの歴史をヒロミツ氏がMCしつつ、ちなんだ曲を披露する。