何度、この本を読んだことか。
この本が出版されたのは1990年。それまで日本のロック、特に70年代初期の情報を得ることは本当に大変だった。


日本ロック大系〈上〉

現在ならネットでいくらでも調べることが可能だが、そのころはネットなんて一部のマニアしか知らない存在だし、たまに音楽雑誌などで日本のロックの名盤特集などを組んでも、それはアルバム紹介に過ぎずミュージシャンがどのような思想でどのような活動をしていたのかなんてわからなかった。

なので当時の状況を知るおっさんや当時のレコードのライナーノーツなどから細々と情報を得ていた。今のようにCDの復刻もそんなに進んでいなかったし。
なので、この「日本ロック大系」が発売されたことは、私にとっては画期的なことであったのだ。
10人のミュージシャンのインタビューが載っているのだが、これがまた貴重な情報が満載で、私はこの本をむさぼる様に読んだ。当時の情景が生々しく想像できた。

この本の内容は、

1957年~1963年・ロカビリー期
1964年~1965年・エレキ・インスト期
1966年~1969年・グループサウンズ期
1969年~1971年・日本のロックの夜明け
1971年~1973年・ロック・バンドの定着
1973年~1974年・ロックの商業的成功
1974年~1977年・多様化

と、7つの項目にわかれてその歴史とその時代の代表的なバンドの経歴、さらにインタビューで構成されている。

白眉はやはりインタビューだろう。
ミッキー・カーチス、柳ジョージ、浅野孝巳、石間秀樹、山口冨士夫、パンタ、小坂忠、小原礼、カルメン・マキ、矢野誠(以上敬称略)

凄いメンツである。

はっぴいえんど系のミュージシャンのインタビューなどはたまにみかけることはあったが、ニューロック系のミュージシャンのインタビューはとても珍しいのだった。

個人的には特に浅野氏のインタビューが面白かった。GS期にレコードを出していないバンドで実力派のバンド「THE M」の素性が明らかになったのだ。
冨士夫さんのインタビューは意外だった。とっても怖い人なのだと思っていたのだが(無論そうなのだが)、受け答えが丁寧で紳士的で古い記憶を一生懸命想い出そうと本当に優しいのである。